外国人雇用の注意点:不法就労させない
外国人雇用と就労ビザ申請を専門としている行政書士の秋山です。このブログは、外国人の雇用と就労ビザについての情報を発信し、読んで頂いた方に「分かり易かった」と言って頂けることや、お役に立てることが目標です。どうぞよろしくお願いします。
「外国人を雇用するのですが、何に注意すれば良いですか?」このご質問もよくあります。 今回のブログでは外国人雇用の注意点の最重要となる「不法就労させないこと」についてお伝えしたいと思います。「不法就労」とはどのような就労を言うのか?そして、「不法就労させない」ためには、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか?
- 1,外国人雇用の関係者は不法就労の基礎知識が必要
- 2,不法就労とは?
- 3,不法就労の代表的な3つのパターン
- 4-1,不法就労させないために:一番間違いやすい「職種」について知る
- 4-2,不法就労させないために:採用面接時に在留カードを確認する
- 5,不法就労させないために:まとめ
1,外国人雇用の関係者は不法就労の基礎知識が必要
「不法就労」と言えば、8月13日に東京の行政書士と人材派遣会社が、不法就労助長と虚偽申請の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
https://www.asahi.com/articles/ASP8F4FCZP8FUTIL009.html (朝日新聞デジタルより)
弊所では、外国人雇用と就労系ビザに特化している為、お仕事をお探しの外国人の方、会社の雇用主や採用担当の方、そして人材派遣や人材紹介会社から就労ビザや外国人雇用についてのご相談等が中心業務です。
ご相談にのっていて共通することは、就労ビザや外国人雇用に関してしっかりとわかっている方が少ないという事ということです。やはり、実際に外国人の雇用に関係しなければ外国人雇用も外国人の就労ビザも身近なことではありません。ですので、外国人の雇用や就労ビザに関する知識がなくても当然です。
ですが、実際に外国人雇用に関わることになれば「不法就労」についての知識は必要な知識です。是非このブログをご覧頂き、基礎的な知識だけでも知っておいて頂ければと思います。外国人の雇用や不法就労に関してはご相談頂ければ詳しいご説明や講習も致しておりますので、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
2,不法就労とは?
まず、「不法就労」とはどのような就労を言うのでしょうか?
以下の3つのパターンは代表的な不法就労のパターンです。
1,不法滞在者等が就労する
2,就労できない在留資格の人が資格外活動許可を得ずに就労する
3,在留資格で就労を認められた範囲を超えて就労する
これらのような状態を「不法就労」といいます。
この3つのパターンのうち、2と3は外国人雇用についての知識があまりない場合に知らずに不法就労をしてしまっているケースです。特に3のケースは複雑で、「認められた範囲」の認識がない、或いは、判断が難しいから起こってしまうと思われます。この「認められた範囲」は就労ビザの種類によって違うので分かりにくいのかもしれません。
例えば、「特定技能」ビザで業務が可能な仕事の内容でも「技術・人文知識・国際業務」ビザでは業務できない仕事の内容があります。違う種類のビザで仕事する外国人従業員がいる場合は注意が必要となります。不安な場合は外国人雇用に詳しい専門家(行政書士や弁護士)に相談しましょう。
3,不法就労の代表的な3つのパターン
①不法滞在者や被退去強制者が働く
・退去強制されることが決まっている人が働く
・在留期限の切れた人が働く
・密入国した人が働く
①の場合は、上記のように日本にいてはならない不法滞在者が働くケースです。
②出入国在留管理庁から就労許可を得ていないのに働く
・観光など短期滞在目的の人が働く
・留学生の人等が資格外活動許可を受けずにはたらく
②の場合は上記のような事例です。
よくあるのは、知り合いの会社が留学生を雇っている、だから自分の会社でも雇おうと思い気軽で雇ったら資格外活動許可を持っていない留学生だったというケースです。(不法就労させていたことになります)
③出入国在留管理庁から認められた就労許可の範囲を超えて働く
・留学生が許可された時間数を超えてアルバイトをしている。
このケースは就職活動に影響してきます。就職活動時、内定をもらってもこのオーバーワークがあったために内定取り消しが起こるということもありますのでご注意ください。
・外国料理店の調理師や語学学校の通訳をしている外国人が工場やコンビニで単純労働者として仕事をする
・技能実習生が認められた就労先以外の就労先で仕事やアルバイトをする
(ニュース等でよく聞く、決められた就労先から行方不明となり別の就労先で仕事をするなどもこのケースに含まれます)
・技術職や専門職で認められたオフィス内での仕事ではなく現場で肉体労働作業を強いられる
③の場合は上記のような事例ですが、よくあるのは、外国人から「就労ビザ」を持っている、期限も有効であると言われたので雇ったが、実は知らずに入管局から認められた業務以外の仕事をさせていたケースです。
このケースでは、「就労ビザ」ならどんな仕事でもできると思っていたという会社の責任者や人事担当者がいらっしゃいますが、「就労ビザ」(就労系の在留資格)は種類ごとに可能な業務が違うので、そのことを覚えておいて頂く必要があります。
以上が、不法就労でよくあるパターンになります。
もし、会社側が外国人を不法就労させたり、不法就労のあっせんをすると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象になります。たとえ会社側が確認不足や認識不足で過失により不法就労させてしまった場合でも、処罰を逃れることはできませんので十分にご注意ください。
「不法就労」は教えてもらわないと知ることができない場合もありますので、不安な場合は外国人雇用に詳しい専門家(行政書士や弁護士)に相談しましょう。
なお、現在はコロナ禍で、入管局(出入国在留管理庁)でも新型コロナウイルス感染症に関する外国人の在留諸申請や生活について支援策をとっております。
事情を考慮してもらって入管局に許可してもらえた場合は、決められた仕事以外でも出来る場合があります。困った場合は入管局や外国人雇用に詳しい専門家(行政書士や弁護士)に相談しましょう。ですが、くれぐれもご注意頂きたいのは勝手に判断して入管局の許可を得ずに許可された以外の仕事をすることです。後々問題になり取り返しのつかないことになる場合もありえますので事前に入管局や専門家にご相談ください。
4-1,不法就労させないために:一番間違いやすい「職種」について知る
①職種によって取得すべき就労ビザ(仕事ができる在留資格)が違う
ビザの種類ごとに仕事内容も違いますし、許可された仕事範囲が違います。許可された仕事範囲外の仕事はできません。このことをよくご理解下さい。もしかしたら、入社後に配置転換で職種が変わったりする場合があるかもしれません。そのときはビザの種類を変更する場合があるかもしれないということです。日本人のように気軽に配置転換できないのでご注意ください。
②すでに就労系の在留資格を持っている外国人を雇用する場合は特に注意する
「すでに就労ビザをもっている外国人だからビザ取得の手間が省けてよかった」と思われる雇用主の方は少なからずいらっしゃいますが、「すでにビザをもっている外国人材にこそ注意が必要」です。なぜなら、その外国人がもっている就労ビザは、以前の会社で取得した以前の会社での業務に合わせて取ったビザだからです。つまりは「以前の会社で従事する以前の業務」の為の就労ビザだからです。
就労系のビザをもっている外国人は「許可された仕事しかできない」という就労制限があるため注意が必要と上記致しました。ビザ(在留資格)はただ持っていれば良いというものではなく、現に従事している職種に合致した就労可能なビザを入管局(出入国在留管理庁)で許可してもらって、その仕事をする必要があります。
ですから、別の会社で仕事していた外国人を中途採用した場合、その外国人が貴社で仕事できるかどうかはわからないということになります。もし、転職してきた外国人が貴社の仕事に合うかどうかを確認したい場合は、就労資格証明書交付申請を行い「就労資格証明書」を取得することをおすすめします。
就労資格証明書とは、雇用予定の外国人の大学等、専攻科目や経歴、貴社の登記事項証明書や会社案内、財務内容を証明する書類を入管局に提出して、審査してもらいその外国人が「現在の在留資格(就労ビザ)で自社でも仕事ができる」ということを証明した書面です。この書類で認められたら安心して貴社で働けます。
4-2,不法就労させないために:採用面接時に在留カードを確認する
外国人を採用した時最低限確認すべきものは以下となります。これらは必ず原本を確認します。
・パスポート
(在留資格の種類と在留期間満了日を確認する)
※在留カードにある在留資格で、貴社での仕事が出来るかどうかの判断に迷ったときは専門家にご相談ください。
有効期限の残りがあるし、前の会社と同じ仕事だから大丈夫と思っていて、更新手続きの時になって更新できず「不法就労」になってしまっていたということもありえます。ご注意ください。
・資格外活動許可の有無(在留カード裏面)
※留学生や家族滞在の在留資格外国人をアルバイトで就労させる場合は、裏面の資格外活動許可の欄に
「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」
と書かれていれば、時間内のアルバイトは可能です。
5,不法就労させないために:まとめ
基本ポイントとしては、職種によって取得すべき就労ビザ(仕事ができる在留資格)が違うため「在留資格で就労を認められた範囲を超えて就労してはいけないのだ」ということでした。そして、すでに就労系の在留資格を持っている外国人を雇用する場合は特に注意が必要でした。最後に、採用面接時には在留カードを確認することも忘れないようにお願いします。
「外国人雇用」は個別具体的な判断が必要な事です。迷った時や不安になった時は自己判断せず、必ず専門家や入管局にご相談くださいね。
このブログが、読んで下さった方のお役に立てれば幸いです。